新年あけましておめでとうございます。

新春を迎え、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、昨年は南部陽一郎、益川敏英、小林誠の3氏がノーベル物理学賞を、また下村脩氏がノーベル化学賞を受賞するという素晴らしいニュースがありました。2002年の小柴氏の物理学賞、田中氏の化学賞以来6年ぶりの快挙ということで、受賞理由となった素粒子やオワンクラゲといった研究テーマが注目され、話題になりました。毎年世界各国で大きな話題となるこのノーベル賞ですが、皆さんはどのような賞であるかご存知でしょうか?

ノーベル賞は発明家アルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年に設立されました。スウェーデン出身のノーベルは自然科学から哲学に至るまで幅広い教育を受けましたが、中でも特に化学の分野に強い関心を抱いたそうです。やがて、彼は産業発展のためには安全な爆薬が必要と考え、ニトログリセリンに注目します。当時からニトログリセリンが激しい爆発力を持つことは知られていましたが、その制御は不可能とされ、運搬には大変な危険が伴いました。ノーベルはこの爆薬を安全に、また完全な制御の下で爆発させる研究に没頭し、珪藻土(藻類の一種である珪藻の殻の化石が堆積したもの)を用いて取り扱いや運搬を容易にすることに成功しました。こうして誕生した画期的な爆薬は、ギリシャ語で「力」を意味するダイナマイトと名付けられ、彼に巨万の富をもたらすこととなります。しかしながら、人々の役に立つように発明したはずのダイナマイトは戦争にも用いられ、多くの人命を奪うことになります。ノーベルはこれを悲しみ、自らの遺産を「人類に貢献した人に賞を与える」目的で使うよう遺言に残したと言われています。

生涯を通じて355件もの特許を取得した類まれなる発明家・研究家であったノーベルですが、ダイナマイトの発明にたどり着くまでには数多くの困難がありました。それでもあきらめずに実験を続ける不屈の精神が彼を成功へと導き、彼の名前を冠したノーベル賞の受賞は研究者にとって最大級の栄誉となっております。

皆さんも学校や部活動、習い事などで忙しい毎日を送られているかと思いますが、少年少女発明クラブの活動を通して不思議に感じたり、興味のあるテーマを見つけたら、ぜひ納得のいく結果が出るまで取り組んでいただきたいと思います。ものづくり体験を通して養われた探究心や忍耐力は、世界を舞台に活躍していく皆さんの将来において非常に大きな糧となることでしょう。

この一年がクラブ員の皆さんにとって新しい発見と探求の年となることを期待して、新年のあいさつといたします。

社団法人発明協会 会長 豊田 章一郎

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