平成20年度全国発明表彰にて、恩賜賞を受賞された「住友金属工業株式会社」様より、《天然ガス採掘をささえる最新技術》に関して説明いただきました!
天然ガスを採掘するパイプ
石油や天然ガスは地中に存在し、鉄製のパイプ(鋼管)を使って採掘されます。とくに天然ガスは、地下数千メートルを超える深さに存在することが知られています。しかし、これまでは4千メートルを超える深井戸から、天然ガスを採掘することはできませんでした。なぜなら、使用するパイプがとつぜん割れてしまうおそれが高かったからです。
どうして、割れてしまうのでしょうか?
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鉄の中の不純物の作用
割れの原因が、鉄の中の不純物であることが最近わかってきました。
鉄といっても、すべてが純粋な鉄でできているわけではありません。鉄を作る時に、鉄以外の酸素や窒素などの元素が混ざり、鉄の中には不純物(酸化物、窒化物など)ができてしまいます。
天然ガスが存在する深井戸は、硫化水素などのガスが含まれるため、鉄が溶けやすい(腐食しやすい)環境であることが知られています。このような腐食環境では、鉄の中にできた不純物には、まわりの鉄が溶けるスピードを速めるか、または自身が溶けることで、まわりに大きな穴をあける作用があります。
穴の底には、外から鋼管に力が加えられた場合に力が集中し、割れがおこってしまいます。
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穴を小さくする工夫
穴を小さくするためには、できるだけ不純物をへらすことが有効ですが、現在の最先端の技術によっても、不純物を完全になくしてしまうことはできません。
そこで、不純物をへらすのではなく、不純物を小さくすることができないか、という方向に発想を転換しました。不純物を大きくしないためには、微量の鉄以外の元素を加えることによって、不純物が別の不純物を包みこむ構造にすればよいことがわかりました。
アルミニウムやカルシウムは酸素とむすびついて酸化物になり、鉄の中に小さく散らばる働きをします。チタンは窒素とむすびついて窒化物になり、酸化物を包みこみ、成長をおさえる働きをします。この微小な不純物が鉄の中の酸素や窒素を完全に吸収し、その他の大きな不純物ができるのをふせぎます。
このような方法で不純物を小さくして、大きな穴があくのをふせぐ技術は世界的にも例はありません。この技術により、腐食しやすい環境でも鋼管が使えるようになりました。
最新技術を使った天然ガス採掘用鋼管
この技術を使った鋼管は、ヨーロッパの北海などの、天然ガスの深井戸に使われています。天然ガスは石油や石炭に比べて、燃やしたときのCO2の排出量が少ないクリーンエネルギーです。しかし、石油にくらべて深い井戸に存在することが多く、これまで充分な採掘ができませんでした。
この最新技術は多くの天然ガスの採掘を可能にし、CO2の排出量をへらすことによって、地球温暖化をふせぐのに役立っています。
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