平成21年度全国発明表彰受賞企業による  技術紹介コーナー

平成21年度全国発明表彰にて、恩賜発明賞を受賞された「株式会社東芝」様より、<液晶テレビの高速応答オーバードライブ技術>に関して説明いただきました!

液晶テレビの残像低減技術《オーバードライブ技術》

どんなことができるの?

オーバードライブ技術は、液晶テレビの残像(動きが早い画像がぼやけてしまう現象)を減らして、動きの早い画像もはっきり、くっきりと見えるようにする技術です。


オーバードライブ技術の発明以前

オーバードライブ技術

液晶テレビの画像表示のしくみ

液晶分子は、電圧をかけられると、寝たり起きたりする性質があります。液晶分子が並んでいる層に後ろから光を当てた場合、液晶分子が完全に寝ていると光は透過しないため黒く見え、液晶分子が完全に起き上がっていると、光が全部透過するため白く見えます。また、液晶分子が起き上がる(寝る)途中で斜めに傾いていると、光は一部だけ透過するためグレーに見えます。このように、電圧によって液晶分子の傾きを変えて、透過する光の明るさを変化させます。液晶分子の層を透過した光は、の3色カラーフィルタに入り、そこで色が作られます。

オーバードライブ技術とは?

残像原因の発見

残像の解決に取り組んでいた多くの研究者は、液晶分子が完全に寝ている状態から完全に起き上がった状態になるまでの時間を短くすることが最も重要と考えて、液晶分子が完全に起き上がる時間だけを測っていました。しかし、液晶分子が斜めになる時間を測る実験をやってみると、驚いたことに、液晶分子を斜めにする方が完全に起き上がらせるよりも4倍以上も長い時間がかかることがわかりました。これが残像の本当の原因だったのです。実験をやっていなかったら、原因はわからないままだったでしょう!

どんな工夫をしているの?

なかなか起き上がれない液晶分子に、瞬間的に今までよりも少し高い電圧をかけて起き上がるのを助けてやります。これがオーバードライブ技術です。すると、動きが速い画面でも、液晶分子はその動きについていけるので、残像がなくなり、鮮明な画像が得られます。これで、サッカーのゴールや野球のホームランの瞬間も思いっきり楽しめます。

発明で社会に貢献

夢の壁掛けテレビと言われた液晶テレビの実現に貢献したオーバードライブ技術ですが、研究開始から製品化まで10年以上もかかりました。他の人がやっていないことにあえてチャレンジする勇気をもって、多くの人々に使ってもらえるまで、あきらめずにチャレンジを長く続けることが大切です。こうしたチャレンジが発明を通じて社会への貢献につながりました。

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