残像の解決に取り組んでいた多くの研究者は、液晶分子が完全に寝ている状態から完全に起き上がった状態になるまでの時間を短くすることが最も重要と考えて、液晶分子が完全に起き上がる時間だけを測っていました。しかし、液晶分子が斜めになる時間を測る実験をやってみると、驚いたことに、液晶分子を斜めにする方が完全に起き上がらせるよりも4倍以上も長い時間がかかることがわかりました。これが残像の本当の原因だったのです。実験をやっていなかったら、原因はわからないままだったでしょう!
なかなか起き上がれない液晶分子に、瞬間的に今までよりも少し高い電圧をかけて起き上がるのを助けてやります。これがオーバードライブ技術です。すると、動きが速い画面でも、液晶分子はその動きについていけるので、残像がなくなり、鮮明な画像が得られます。これで、サッカーのゴールや野球のホームランの瞬間も思いっきり楽しめます。
夢の壁掛けテレビと言われた液晶テレビの実現に貢献したオーバードライブ技術ですが、研究開始から製品化まで10年以上もかかりました。他の人がやっていないことにあえてチャレンジする勇気をもって、多くの人々に使ってもらえるまで、あきらめずにチャレンジを長く続けることが大切です。こうしたチャレンジが発明を通じて社会への貢献につながりました。
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